本展示では、写真家・津田直の視点を通してイノーを見つめ、海との関わり方を探り、その意味を問い直す。
世界を旅し、ファインダーを通して古代より綿々と続く、人と自然との関わりを翻訳し続けている津田は、文化の古層が我々に示唆する世界を見出すため、見えない時間に目を向ける。沖縄・伊平屋島のイノーという「境界」の風景とそこでの営みをたどることを通して、人はどのように自然を認識し、言葉を与え、その環境と関係を結んできたのか。その問いを通して、海を見る私たち自身の世界観を更新することが本展示の目的である。
境界から海を読みなおす
海と陸との境界は、私たちが思うほど明確ではない。
沖縄・伊平屋島の「イノー」は、潮が満ちれば海となり、引けば人が歩き、魚や貝を採ることのできる場所である。そのサンゴ礁に囲まれた浅い海では、人々は、月の満ち欠けや潮の満ち引きという自然の時間に寄り添いながら暮らしてきた。
伊平屋島には「アミシー」と呼ばれる数多くの海の地名が残されている。それぞれの名前には、水深や潮流、岩礁の形、生き物の集まる場所、漁の方法など、その場所に固有の環境が刻まれている。名付けることは、その場所を認識することである。多様な地名は、人々が海を高い解像度で見つめ、その違いを暮らしの中で読み取ってきた証でもある。
しかし、海岸線の人工化や砂浜の消失によって、私たちの海の認識は次第に単純化されつつある。海は「海」、陸は「陸」という単純な区分へと還元される。その結果、海との関わり方もまた画一的なものになってはいないだろうか。イノーには、その失われつつある海との豊かな関係性が今なお息づいている。
イノーを知ることは、失われつつある海との関わりを取り戻すことである。
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写真家 津田 直(つだ なお)
1976年神戸生まれ。世界を旅し、ファインダーを通して古代より綿々と続く、人と自然との関わりを翻訳し続けている写真家。文化の古層が我々に示唆する世界を見出すため、見えない時間に目を向ける。2001年よりランドスケープの写真作品を発表。また最近では、現代美術のフィールドを越えて他分野との共同制作や雑誌連載、講演会、特別授業を行うなど活動は多岐にわたる。
主なシリーズに、『SMOKE LINE』(2008)、『Storm Last Night』(2010)、『Grassland Tears』(2016-)、『Elnias Forest』(2018)、『LO』(2026)などがある。みなとラボとは二回にわたり協働で行った海洋教育のワークショップの成果が『海を見ているたくさんの目/聞こえてきた海』(みなとラボ出版)として書籍化されている。
Website
https://tsudanao.com/
動画撮影協力:大友洋一

