鳥羽市立海の博物館

波の穏やかな生浦湾の奥部に複数の建物が建つ様子は、日本の漁村の風景を彷彿とさせる。 写真提供 : 海の博物館
黒い外壁の展示棟は、タール塗装が施されたスギ板張り。伊勢志摩地方の漁村の風景に見られる「焼杉板」からデザインされている。 写真提供 : 海の博物館
柱のない大空間に100艘の木造船が並ぶ圧巻の収蔵庫。伊勢湾や志摩半島、熊野灘で使われていた漁船を中心に全国の木造船が集まる。 写真提供 : 海の博物館

海の営みを余すことなく伝える、日本有数の海の博物館

三重県鳥羽市浦村町にある博物館。1971年に私設の博物館として開館し、海とともに生きる「海民(かいみん)」と海の関わりについて、さまざまな視点で調査、研究、展示、社会教育活動を行っている。2017 年には鳥羽市立の博物館となった。二代目館長も務めた石原義剛が主に収集した膨大な海の民俗資料は生活様式の変化で失われたものも多く、非常に貴重な内容となっている。その内容は、水産業、海運業、造船(主に木造船)、海産物の流通など、経済、宗教、民俗、文化、資源保護、海洋汚染などの多岐にわたり、2021年には収蔵資料点数が63,000点(うち国指定重要有形民俗文化財6,879点を含む)を超えた。
現在の建物は建築家の内藤 廣による設計。旧館より現在の地に移転を行い、収蔵庫が先行し、続いて展示棟の完成とともに一般に公開された。収蔵庫は、大型の船も収蔵できる柱のない大空間で100年は持たせて欲しいというオーダーに対して、プレキャストコンクリート造とした。また、人が中心となる展示棟は、大断面集成材を用いて巨大な空間を実現。近年新たに試みられている木質の大空間に先行するもので、海さながらに多様なコレクションを包み込む。

鳥羽市立海の博物館
・設計:内藤廣建築設計事務所
・所在地:三重県鳥羽市浦村町大吉1731-68
・用途:博物館
・竣工年:1992年

Text:Yoshinao Yamada