DISTEST / 潮騒しおさいRADIO vol.13

ミュージシャンやDJが、海をイメージした選曲をプレイリストとしてお届けする〈潮騒RADIO〉。

vol.13は、関西拠点の音楽ユニット「NEW MANUKE」のメンバーであり、DJとしても活躍するDISTESTさんが登場です。瀬戸内海に臨む兵庫県神戸市で長く暮らしてきたDISTESTさんに 「Fishing on an artificial island(人工島での釣り)」と題して、楽曲をセレクトしていただきました。

記憶に残る「人工島での釣り」

ーDISTESTさんは出身も神戸ですか?

出身は兵庫県の明石市です。

ー明石ダコで有名なところですね。

明石といっても、加古川に近い西のほうで、港や市場があるような場所ではなかったんですよ。近くに海はあったんですけど、工場が多い地域でした。でかいタンカーが泊まっていたのを覚えていますね。

小さいころ、お父さんによく魚釣りに連れてってもらってて、岸につながれた船の下に糸を垂らして釣りをしていました。船の下にポイントがあって、メバルとかがいるんですよ。今回のプレイリストも、わりとそういうところから選びました。

ープレイリストのタイトルは「Fishing on an artificial island(人工島での釣り)」。

明石にいたとき、人工島(じんこうじま)と呼ばれる、橋でつながった工業団地みたいな場所があって。いるのは、釣り人か、そこで働いている人くらい。当時、海といえば人工島でした。

ープレイリスト全体としてのイメージは?

基本的には、釣りをしているイメージですね。のんびりしつつ、退屈でもあるような感じです。ただ、明石は淡路島や須磨も近くて、海水浴にも行ってたので、そうしたことも思い出しながら選びました。

ー1曲目はニューヨーク拠点の実験的なバンド、Black Diceの“Cloud Pleaser”。

これは、まさに釣りをしているときですね。波がゆらゆら揺れてて、糸をずっと見ている感じです。

ー2曲目の真心ブラザーズ “海”に続き、3曲目はStyrofoam ”The Sign That Points One Way”。Styrofoamは「発泡スチロール」を意味するように、シンセサイザーの音色は、海洋ごみを想起させるようにも思いました。

アコースティック楽器で演奏されるようなオーガニックな方向ではなくて、人工的というか、海洋ごみがあるような状況でも、それはそれで楽しめるなと。遊び場みたいな感じですね。

曲の雰囲気も、海っぽいなと思います。なんていうんかな、海ってぼんやりしたイメージがあるんですよね。抽象画というか、あまりパキッとしてなくて。こういう電子音楽は(このプレイリストに)合うなあと思って、その方向でまとめることも考えたんですけど、海の要素はそれだけじゃないなと思って、いろいろな曲を選びました。

ー次は、江沼郁弥 “丹光、冬越え”。

歌詞に「涙が流れて海へと戻る」とあったので選びました。江沼さんは(2曲目に選んだ”うみ”の)真心ブラザーズの曲で、アレンジを手がけたこともあるんですよね。もともと「plenty」というバンドをやってて、これはソロで出した曲です。

江沼さんのほかの曲も、レゲエっぽい曲が多いですよね。リミックス・アルバムも出していて、それも(レゲエから派生した手法である)ダブ・ミックスみたいで、海っぽいなと。

ー続いて、武満徹、芥川也寸志による“オーケストラのための組曲「太平洋ひとりぼっち」”。

市川崑監督の映画『太平洋ひとりぼっち』の曲です。ほんまは、ギタリストの鈴木大介さんが弾いているバージョンがいいんですけど、サブスクで聴けるものがなくて、プレイリストだったら、この長尺の原曲ものんびり聴くのにええかなと思いました。

ー7曲目の伊藤賢治 “人魚の伝説”は、RPG『ロマンシング サ・ガ2』のフィールドBGMとしても知られています。

釣りに行ってたころによくやっていたゲームの曲で、そこから選びました。

ーゲーム音楽は、クラブ・カルチャーとの接点もありますよね。

『クロノ・トリガー』の曲も、クラブで一時期よくかかっていましたよね。日本のゲーム音楽の再評価という流れのなかで、サンプリングのネタにされたりもしていました。

ーそこから、ポップ・パンク〜メロコア色の2曲に続きます。まずはThe Piggies “California Beach”。

The Piggiesは、2000年前後にライブハウスでよく名前を見かけたバンドですね。「難波ベアーズ」 ( ※1 ) でもライブしていましたし、再結成していまも活動しています。

※1 難波ベアーズ 1986年に開店した、関西アンダーグラウンドを代表する老舗ライブハウス。2026年7月にビル解体にともない同地での営業を停止。

そして、Northern19 “SUMMER”。「北国」出身で「19歳」のときに結成したから「Northern19」と命名されたという話です。

Northern19も、いまも続けている人たちですね。北の海って厳しそうやけど、開放的なことを歌っています。

ーこの2曲は、どのような意図で選んだのでしょうか?

海って、どっちもあるじゃないですか。開放感もあれば、そこで働いている人もおるし……いろんな面があるよ、ということは、プレイリスト全体を通して入れたかったです。

ーその次は、Austin Cesear “Ain’t It So (Necessary)”。

これはずいぶん前にnaminohana records(大阪・谷町六丁目)で買ったレコード『West Side』に入っていた曲なんですけど、そのレコードはアメリカ西海岸の港にインスパイアされたアルバムらしいんです。このオファーをもらって、「港といえば」と、最初に思い浮かんだのがこの曲でした。

ーこの曲に「港」を感じますか?

あんま感じないですね。でも、自分とは違う見え方があるんやろうなと思って。

ー11曲目は、Silent Phase “Waterdance”。

デトロイト・テクノの人です。家にこのレコードがあって、好きやし、タイトルもいいなと思って選びました。

ー「潮騒RADIO」では、海をイメージさせる音楽として、デトロイト・テクノの曲を挙げる選曲者がほかにもいらっしゃいました。

そうですよね。海というか、深海みたいな感じがあるんですけど、自炊くん(DJ)とも「デトロイトって湖はあるけど、海はないよな」という話をしていて……みんな、どういう気持ちで海を想像しているんやろう。わりと不思議です。

ーそして、Johnny Harris “Imagine”。

これはジャケットが海なんですよ。(原曲の)John Lennonも、港町のリヴァプール出身やし。

ー続いて、Ed Matus & Takeshi Muto “Halo Besos”。

これもジャケットが海なんですけど、エレクトロニカで、ゆらいでいる波の感じというか、フワフワした海のイメージで選びました。

ー最後は、ドイツのEinstürzende Neubautenによる“Styropor”。曲名は、発泡スチロールの商品名です。

(人工島の話で)さっきも言ったんですけど、船の下に釣りのポイントがあって、その船と陸をわたす橋を浮かせるのに、発泡スチロールが使われているんですよ。橋の下に何個か置いて、船に乗る足場にしているんですが、それがギスギス当たる音が、まさにこの曲なんです。

ー人工島や発泡スチロールも、今回のプレイリストで重要な要素になったと受け止めています。

自分としては記憶としてあるものなので、すんなり結びつくんですけど、なんの説明もないままで聴いたら「これが海のプレイリスト?」って思うかもしれないですよね。

ーリスナーの方も、それぞれの海の記憶をなぞるきっかけになるようなお話だと思いました。みなさん、プレイリストを楽しんでいただければ幸いです!


TRACKLIST

Black Dice – Cloud Pleaser
真心ブラザーズ – うみ
Styrofoam – The Sign That Points One Way
江沼郁弥 – 丹光、冬越え
武満徹, 芥川也寸志 – オーケストラのための組曲「太平洋ひとりぼっち」
Arovane – The Storm
伊藤賢治 – 人魚の伝説
The Piggies – California Beach
Northern19 – SUMMER
Austin Cesear – Ain’t It So (Necessary)
Silent Phase – Waterdance
Johnny Harris – Imagine
Ed Matus & Takeshi Muto – Halo Besos
おおたか静流 – 花
Einstürzende Neubauten – Styropor


Profile

DISTEST | ディステスト

2025年に25周年を迎えた大阪の名物パーティ「MIDI_sai」でのDJや、栗原ペダル/荒木優光らとともに音楽グループ「NEW MANUKE」のメンバーとして活動。おもなリリースにMIX CD『Mild Ecstasy』、NEW MANUKEとしては〈HEADZ / Leftbrain〉より『SOUR VALLEY』などがある。

X : @dixtex_2000

取材・文 花澤王
イラスト 沖真秀