KIRAYAMA / 潮騒しおさいRADIO vol.11

ミュージシャンやDJが、海にまつわる選曲をプレイリストとしてお届けする〈潮騒RADIO〉。

vol.11は、DJのKIRAYAMAさんが登場です。富山県豊岡市の出身で、大学進学以降は沖縄県那覇市で10数年、現在は神奈川県南部で暮らされている方です。富山湾、沖縄では太平洋と東シナ海、そして相模湾と、海と遠からず生活するなかで感じたこととは? 思いがけない方向から楽曲をセレクトしていただきました。

近くにいても、海に行かない

ー海にはよく行っているんですか?

いまに至るまで、ほぼほぼ行かないというか……特に沖縄は、象徴的に海のイメージがあると思うんですけど、年に1回も行ってないです。

ー海の近くに住んでこられたので、海が好きなのだと思っていました。

住んだのは、たまたまですね。生まれた場所(富山)も自分で選んだわけではないですし、沖縄へは大学進学で行って、神奈川へは一身上の都合で引っ越してきたので、(インタビュアーに)言われて初めて「海の近くに住んできたな」と気づきました。

今回のプレイリストは、クラブでかかるような曲というより、家で聴いている曲が中心です。あと、プレイリストのタイトル(テーマ)を一応決めてきたんですけど、「海に行かない」というタイトルで。

ー近くにいるのに、海に行かない。ご自身のお話でもありますね。

「海」という、ぼんやりしたイメージは好きなので、海っぽい曲、水っぽい曲を集めました。(最後から2曲目には)Pat Metheny Groupの“James”という、海とは関係なさそうな曲を選んでもいるんですけど。

ーちなみに、同曲が収録されたアルバム『Offramp』の1曲目は”Barcarole”。イタリア語で「舟歌」を意味するタイトルです。

(ブラジルのパーカッショニスト)Naná Vasconcelosが共作して、参加している曲ですよね? 好きでよくDJでもかけていたので、この曲を選べばよかったのかもしれないんですけど、”James”を選びました。

沖縄には、独特な「ペンション・カルチャー」があるんです。本土のような「ペンション=小規模な宿」という認識ではなく、大学生がちょっとした休みに借りられる貸別荘やAirbnb(民泊)みたいなもので、複数人で宿泊代を割り勘にして、お酒や食べ物を持ち込んで遊ぶんですね。

大学進学で沖縄に住みはじめたんですけど、暗い青春時代というか、そうした学生がするようなアッパーな遊びをぜんぜんしてこなかったんです。憧れもあって、家で”James”を聴きながら、ペンションに思いを馳せるようなときがありましたね。

ー2曲目、Alvarius B. “Mosquito”は、ギターとハーモニカのインストゥルメンタル・トラックです。ひしゃげたような音で、タイトルを和訳すると「蚊」。

沖縄は多湿で、正月でも蚊が飛んでいるときがあるんです。なので、「蚊」だなと。このアルバムのジャケットも、曇りがかったビーチですね。

海風が運ぶ湿度は、海沿いでなくても感じられます。沖縄は、世のイメージほど気温が上がるわけでもなくて、私が住んでいたころでも最高気温で33℃ほど。ただ、ずっとぬるま湯につかっているような暑さで……気候のありかたは、人の行動や考え方に影響を及ぼしますよね。

ー3曲目にJamie Leeming “Shore Embrace (feat. Laura Misch)”、9曲目にLiv.e “You the One Fish in the Sea”など、モダンなジャズやR&B関連の作品も選んでいただきましたが、どことなく気だるいムードが漂っているように感じます。

原マスミさんの”海で暮らす”(5曲目)も、Arthur Russellの” Let’s Go Swimming (Live 6/24/84)”(7曲目)も、どこか「内省的な海」という印象があり、共感できるなと思っています。

ー10曲目は、アメリカ合衆国のデトロイトを拠点とするDJ/プロデューサー、Theo Parrishによる”Heal Yourself And Move”。ダンス・ミュージックでありながら、わかりやすくアッパーなものではありません。

これも昔からよく聴いている曲で、海を感じられるなと思って選びました。(同曲が収録されたアルバム『First Floor』の)ジャケットの中面では、バスタブに大量のレコードを入れて、そこに人がつかっています。そのイメージもあって、水っぽさ、海っぽさを感じたのかもしれません。

ー音としては、不穏で不確定な要素が多く、深海にもぐっているようなイメージです。

Theo ParrishはDJとしてはアッパーなプレイもするんですけど、このアルバムを中学生くらいのころに地元で買って聴いたとき、「こんなに暗い音楽が世の中にあるんだ」と衝撃を受けました。この曲は10分近くあるんですけど、快楽に身をゆだねるような高揚感ではなく、グジグジ、ダラダラとした展開で、ダラッとした長尺の感じも海っぽいなと。あまりよいとは言えない状態のまま、漂いつづけるというか。その次のFeist “Get Not High, Get Not Low”も、タイトルどおり、高くもなく低くもなく、たゆたうような曲調が海らしいなと思います。

ー最後の曲には、山下真木子 “うみにいこう”を選んでいただきました。

昨年、娘が生まれてから、NHK「Eテレ」で子ども向けの番組を見るようになったんです。”うみにいこう”は『いないいないばあっ!』という番組の曲ですね。シンプルに歌いかけるようなトーンで、すごくいいなと思って選びました。

ーリスナーのみなさんへ。このプレイリストは、どういうときに聴いてもらえたらより楽しめそうでしょうか?

海に行きたいようで、行きたくないとき……とかでしょうか。夏、本当に暑いじゃないですか。部屋で涼みながらでも、少し曇った瞬間に海へ行こうと思ったときでも、好きなときに聴いてもらえたらうれしいです。

ー本日はありがとうございました!


TRACKLIST

Kath Bloom & Loren Connors – We’re On Our Way
Alvarius B. – Mosquito
Jamie Leeming – Shore Embrace (feat. Laura Misch)
Plaid – Uland
原マスミ- 海で暮らす
Sun City Girls – Garuda’s Playhouse
Arthur Russell – Let’s Go Swimming (Live 6/24/84)
Rei Harakami – 海月流戱
Liv.e – You the One Fish in the Sea
Theo Parrish – Heal Yourself And Move
Feist – Get Not High, Get Not Low
Fabiano do Nascimento & E Ruscha V – Bio
Caetano Veloso – Louco Por Você
Satomimagae – Wave (feat. duenn)
Pat Metheny Group – James
山下真木子 – うみにいこう


Profile

KIRAYAMA | キラヤマ

富山出身、14年間の沖縄在住を経て現在神奈川県民。
近年の主なレギュラーに、英NTS Radio”From Sun City”レジデント(’17年4月-’25年5月)、
ディープリスニングパーティー”ideala”@幡ヶ谷フォレストリミット隔月レギュラー(’23年12月-’25年2月)

IG : @kirayama__

取材・文 花澤王
イラスト 沖真秀