okadada / 潮騒しおさいRADIO vol.05

ミュージシャンやDJが、海をイメージした選曲をプレイリストとしてお届けする〈潮騒RADIO〉。

vol.05は、DJ・トラックメイカーのokadadaさんが登場。規模の大小を問わず全国各所のクラブで活躍し、FUJI ROCK FESTIVAL(新潟・湯沢町)、ラグーナビーチ&ラグナシアでの「森、道、市場」(愛知・蒲郡)など、野外フェスへも数多く出演してきたトップDJのひとりです。今回は「海のなかへ」というコンセプトのもと、海そのものを感じるような楽曲をセレクトしていただきました。

「海のなかにいる感覚」のような楽曲群

ーokadadaさんのご出身は?

実家は滋賀県の山のほうなので、「海は遠いなあ」と。滋賀といっても、琵琶湖からも遠い場所でして。

ー今回のプレイリストは「海のなかへ」と題して選曲していただきました。

オファーのメールに「海がテーマだったら、コンセプトはこっちで立てていい」と書いてあったので、「海のなかにいる感覚」みたいな曲を集められへんかなと。ただ、アンビエントやニューエイジでの「水族館でかかるBGM」みたいなものとは、違うやり方にしようと思いました。そういう曲も好きやし、家でもよく聴くんですけど、ヒップホップとかジャズとかが入っていたほうが聴きやすいだろうと。1曲目のジャコパスのアルバムは、学生のころにめちゃめちゃ好きでよく聴いてましたね。

ーJaco Pastoriusによるベース・ソロの曲、“Portrait of Tracy”ですね。

(9曲目”Reminiscence“の)濱瀬元彦さんも、ベースでポコポコした音を出しています。プレイリスト全体としては、最初は水面でチャプチャプしてて、深海に潜って、また戻ってくる、みたいな流れになったと思います。最後にバシャバシャ出てくるっていう。「海のなかにいる感覚」といっても、海中か、水面か、どっちにいるのか曖昧にしたいとも思っていましたね。

ードイツのロック・バンド「CAN」の名盤『Future Days』(1973年)から”Spray”をセレクトしているのも印象的でした。

「CANと海は結びつかない」って思いそうですけど、ind_fris(愛知県拠点のプロデューサー)が『Future Days』を聴いて、「水面に光が当たってチラチラ光るような、ランダム性がある」って言ってて。それで『Future Days』には水のイメージが引っついたから、選んできたんだと思います。

あと、後半に、平岩英子さんの”水のように”という、そのままのタイトルの曲も選んだんですけど、「海と水の違いはどう考えたらいいんやろ」とかも考えましたね。琵琶湖と海はどう違うのか、みたいな話にもなるし、「水中と海中はどう違うんやろ。水のなかは〈状態〉だけど、海のなかは生態系があって……」などと考えていたんですが、それをプレイリストで表現するのは無理だなと。

ーずいぶん深いところへ……。

そういうことはやめよう。無理なことはやめよう、と。

海って難しいですね。平穏ばかりでもないし、荒海もあるし。「海中」というと、海から遠い場所で暮らす人にとっては「平穏」のイメージがパッと出てくるけど、本当はぜんぜんそんなことないわけじゃないですか。

ーイメージと違う、という話で言えば、5曲目のHerbie Hancock ”Rain Dance”が収録されたアルバム『Sextant』は、宇宙的なモチーフを取り入れたジャケットだったのも意表を突かれました。

宇宙とも言えるし、なんとでも言える……という感じですね。このアルバム、好きですね。この時期のHerbieは、サイケデリックなシンセを取り入れたりもしてて、「海」って考えたときに、曲名も”Rain Dance”で、ピチャピチャしているからいいかなと。レゲエとかもそうなんですけど、(曲のなかで聴こえる)リバーブの音(残響音や反響音のエフェクト)ってピチャピチャしてるじゃないですか? あれが水の音に聴こえるとも言えるし。

ーほかの曲で言えば、3曲目”Low Tides”のChristoph El Truentoは、ニュージーランドのレゲエ職人。たしかにピチャピチャ聴こえます。

いろんな音楽を聴いてて、「あるときにはそう聴こえるけど、別のときにはそう聴こえない」ってあるじゃないですか。たとえば、「火のプレイリスト」って言われたら火に聴こえるし、「海のプレイリスト」って言われたら「海かあ」って思ったりもするかな、と。今回は「海」という縛りのなかで幅を出そう、みたいな感じでプレイリストをつくりました。

ーちなみに、海をテーマにした曲はたくさんあるんですか?

海のテーマ、水のテーマの曲はめちゃめちゃあります。火のテーマの曲、土のテーマの曲よりも、圧倒的に水の曲のほうが多い気がしますね。親和性があるのかな? 絵やったら、石とか木はモチーフになるけど、海は広すぎてモチーフになりづらくて、音楽は実体がないから海がモチーフになるのかな。あと、音楽は「音波」って言ったりもするし。今回は、土のプレイリストじゃなくて、海のプレイリストでよかったなと思いました。

ー海の曲はたくさんあると。ロシアのX.Y.Rによる楽曲も選ばれていますが、X.Y.Rと海が結びつく要素はどこにあるのでしょうか?

X.Y.Rは、いちばん初めに聴いたのが『robinson crusoe (lost soundtrack)』っていう、小説『ロビンソン・クルーソー』(船乗りの漂流記)を題材にしたアンビエント・アルバムだったので、海の印象が最初からあって。とらえどころがないけど聴いててめちゃくちゃ気持ちいい、多作なアンビエントのミュージシャンです。この曲は、タイトルが”underwater calm”っていう……。

ーまさに「海のなかにいる感覚」。最後にリスナーのみなさんへ。このプレイリストは、どのように聴くのがよさそうでしょうか?

リラックスするときに聴けるようにも考えたというか、流しっぱなしにしても、なんとなくいい感じになるようにしました。一回グッと聴いてみて「海かあ」ってなるのも面白いと思います。

ムーンライダースの鈴木博文さん、元リアル・フィッシュの美尾洋乃さんによるユニット「Mio Fou」の”海の沈黙”を最後の曲にしようと思ってたんですけど、サブスクに入ってなかったので、今回は外したことも伝えておきます。

ー気になる方は、CDやレコードなどでチェックしていただければと思います。本日はありがとうございました!


TRACKLIST

Jaco Pastorius – Portrait of Tracy
Tondo Trio – Soul Scuba 95
Christoph El Truento – Low Tides
YOSSY LITTLE NOISE WEAVER – Small Ship
Herbie Hancock – Rain Dance
CAN – Spray
Arthur Russell – Ocean Movie
原田悠里 – 隠恋慕
濱瀬元彦 – Reminiscence
X.Y.R. – underwater calm
平岩英子 – 水のように
Doctor Rockit – Runners On Hastings Beach
Die Antwoord – Age Of Illusion
Gitkin – El Gran Camino
Juana Molina – La visita


Profile

okadada | オカダダ

1986年、滋賀県生まれのDJ/トラックメイカー。
大規模な都内のクラブ、「lost decade」「LESS」「AUDIO TWO」「now romantic」などのレギュラーパーティー、 野外フェス、コアなパーティーなど、全国の多岐にわたるイベントに出演。
2018年末には代官山UNIT、2025年末には渋谷O-EASTでの単独ロングセットを成功に収めた。
トラックメイカーとしては、ネットレーベル「Maltine Records」やbandcampで楽曲をリリース。 各種コンピレーションへの参加、Red Bullへの楽曲提供、FPM(Fantastic Plastic Machine)、ZEN-LA-ROCK、韻踏合組合、夢眠ねむ、ディスク百合おん、小泉今日子、早見優などへのリミックス提供、雑誌『USCA(ユースカ)』への寄稿、スペースシャワーTVの番組ではカラオケを披露するなど、さまざまな活動を展開。
DJ仲間・shakkeとのおしゃべりポッドキャスト「チャッターアイランド」もSpotifyで配信中。

IG : @okadada

取材・文 花澤王
イラスト 沖真秀