emamouse / 潮騒しおさいRADIO vol.04

ミュージシャンやDJが、海をイメージした選曲をプレイリストとしてお届けする潮騒RADIO。

vol.4は、独自の世界観で国内外に熱狂的な支持者を持ち、各方面へ活動の幅を広げるシンガーでソングライターのemamouseさんが登場。「海に飛び込んで深海まで潜る旅」をテーマに楽曲をセレクトしていただきましたが、プレイリストの制作には個人的な「ある体験」が影響を及ぼしていたようです。

海に飛び込んで深くまで潜る旅

ー海で溺れかけたことがあると聞きました。

高校生のときの話ですね。私は、今以上に常識がなかったので、台風が来ているというのに何も考えず、友達と海へ遊びに行って泳いでいたら、普通に溺れました。

ー自然の猛威にさらされたと。

大きな波で丸呑みにされて、たとえるなら、洗濯機のなかに入れられてグルグルと回転させられているようでした。海中でグルグル回ってて、息ができないから、たまに海面から顔を出して一気に息を吸って、というのを繰り返していたことがずっと記憶に残ってます。どうにかしようと泳いでも、陸から離れていくので「これはマズイ」と思っていたら、友達がライフセーバーの方を呼んでくれて、助けてもらいました。

ー危うい状況でしたね。

海は美しいけど、畏怖する感覚も同時にあって、ビビりながらも魅せられるなあと思いつつ、このプレイリストをつくりました。「ビーチで遊ぶ」みたいな、楽しそうな方向には行けませんでした。

ー選曲時に心がけたことを教えてください。

海はキレイなところ、怖いところ、簡単に説明できなさそうなところと、さまざまな側面があるだろうと思って、そうした多様性を選曲に取り入れました。全体の構成としては、浜辺からスタートして、海に飛び込んで、深海まで潜っていく、という流れですね。1曲目は「太陽」「海」という言葉が出てきて、波の音、カモメらしき鳥の声も入っている”Sous le soleil exactement”から始めました。

ー続くご自身の曲”うでやこえのうた”では、雲や「海の上の花火」などのモチーフを歌いながらギターを弾かれていますが、プレイリスト全体として、ギターが入っている曲が多い印象です。

5曲目の”Lute Suite In E Minor, BWV 996: Sarabande (J.S.Bach)”は、Andres Segoviaというスペインのクラシック・ギターの巨匠が弾いている曲ですが、ここは、サンゴがあって、キレイな魚がいて、という美しい海のイメージ。この次の”Canção Do Amor Ausente (Arr. for Guitar by Antonio Grande)”もギターの独奏曲で、同じ方向で続けていますが、この2曲はうっとりするような美しい海。海は、ざっくりしてそうだけど、細かなテイストもあるのではと思っていて、この2曲のように繊細で手数が多く技巧的なギターに海っぽさを感じています。

ーその次のÅreknuteknyterneによる楽曲にもギターが入っていますが、シンセサイザーの響きも含めてダークな世界観です。

このあたりは、海中にも「しんどい場所」があるのかな、と思って選んだ曲が続いています。海洋ごみがあったり、光が差さなかったり、異様な深海魚がいたり、とか。Squarepusher の”Big Loada (Oval Remix)”は冒頭に汽笛のような音が入っていますけど……。

ー本当だ。入っていますね。

プレイリストでは、この曲から、自分が波に呑まれたときのイメージで何曲か続けています。”Wasos (feat. Dengue Dengue Dengue)”の3拍子も、単調な4拍子ではなく、波に呑まれてグルグル回転させられるようです。Mad Zachの”Dark Street”は、踊りでいえば腰が動く、ビートが回転しているような曲だと思っていて、私は波に呑まれて回転するような感覚が好きなんだろうなと。

ー4曲目にElliott Smithの”Everything Means Nothing To Me”が入っていたのも印象的でした。

とんでもなく美しい曲なんですけど、Elliott Smithは自分で死を選んだ人でもあって、その人が「全部、意味がない」と言っている。海にはいろいろな要素があるけど、虚無もあるだろうし、意味もないのかもなあと。怖いのも含めて、美しいのが海。全曲、私が美しいと思う曲を選びました。

ーみなさま、プレイリストを楽しんでいただけたら幸いです。本日はありがとうございました!

ありがとうございました!


TRACKLIST

Anna Karina – Sous le soleil exactement
emamouse – うでやこえのうた
Koen De Bruyne – Nude
Elliott Smith – Everything Means Nothing To Me
Andres Segovia – Lute Suite In E Minor, BWV 996: Sarabande (J.S.Bach)
Baden Powell – Canção Do Amor Ausente (Arr. for Guitar by Antonio Grande)
Åreknuteknyterne – Untitled (Original tape)
Squarepusher – Big Loada (Oval Remix)
Susobrino – Wasos (feat. Dengue Dengue Dengue)
Max Cooper – Order From Chaos
Mad Zach – Dark Street
Boards of Canada – Sixtyten
LUNA SEA – Rain
The Beatles – She’s Leaving Home


Profile

emamouse | エママウス

皮膚(という設定のマスク)を被って2015年よりLIVE活動を開始。
自身をモチーフとしたイラストレーションや、漫画、自撮り、動画、実際には存在しないゲームのサウンドトラック、実在するVisual Novel(ゲーム)のサウンドトラック、さまざまな音楽などを制作。
建築家見習いとして、架空の空間を作り、そこで暮らしているemamouseという生き物。
近年は、Peepyというぬいぐるみを作る会社「itemLabel」のCEO・CXOとして、日々、彼らのテーマソングづくりに励んでいる。
あと、ギターとZooChee4というバンドも始めた。夢はロックスター。
X : https://x.com/emamouse

取材・文 花澤王
イラスト 沖真秀