GQOMZILLA / Sound of the wavesShiosaiRADIO vol.07

"Shiosai RADIO" is a playlist curated by musicians and DJs, featuring songs related to the ocean.

vol.7は、DJ MOROさんとKΣITOさんによるDJユニット「GQOMZILLA(ゴムジラ)」が登場です。彼らがプレイの軸とするGqom(ゴム)は、南アフリカ共和国の港湾都市・ダーバンで生まれたダンス・ミュージックの1ジャンル。おふたりはアフリカ大陸でのフェスやイベントに出演してきた、国内では数少ない現地を知るDJ・プロデューサーで、mitokon、K8、HW BINGOを含めた5人のDJクルー「TYO GQOM」のメンバーでもあります。Gqomを知らない初心者でも楽しめる、「Gqom入門」にふさわしいセレクトをしていただきました。

港湾都市・ダーバン発祥の「Gqom」とは?

ーDJ MOROさんは横浜出身だそうですね。

DJ MORO : 横浜は、海といっても砂浜ではなく港が中心。昔、桟橋や埠頭で釣りをしていた記憶があります。夜景がキレイだったり、カモメが飛んでいたりと、横浜にはロマンがありますよね。いま住んでいるところは、港から少し距離がありますが、横浜から離れないことを小さなこだわりとしています。一時期は東京に住んでいましたが、戻ってきました。

ーKΣITOさんは東京の内陸部の出身で、海と縁深くはないものの、南アフリカ共和国の港湾都市・ダーバンへ行かれたと聞きました。

KΣITO : 本場のシーンを体験してきました。現地のプロデューサーとスタジオで曲をつくったり、複数のパーティーをハシゴしたり、Shisanyama(シサニヤマ)という南アフリカのバーベキューを食べたり、ビーチに行ったり……あと、ダーバンはインド洋に面しており、歴史的にインド文化からの影響も強く、名物の「バニーチャウ」という、食パンをくり抜いたなかにカレーが入った料理も食べましたね。Gqomはダーバンの「タウンシップ(旧アパルトヘイト政策の一環として、都市近郊に設けられた黒人専用居住区)」発祥とされていますが、複数あるタウンシップのなかで、自分が訪れたのは、海沿いよりもう少し内陸に入った、丘の上にあるような郊外のエリアでした。

ーそもそもGqomとは、どのような音楽なのでしょうか?

KΣITO : すごく簡単に言うと、南アフリカ共和国で生まれたハウス・ミュージックのなかで、特に速くて力強いのがGqom。ストレートな四つ打ち ( ※1 ) の曲はほとんどなく、変則的なリズム・パターンが特徴で、歌い上げるような曲もありますが、かけ声やビートを楽しむ曲のほうが多いように思います。世界的に認知されたのは、2010年代の中盤以降でしょうか。BPM ( ※2 ) でいえば、125前後のものがGqomには多い印象です。

DJ MORO : Gqomの前段階として、1990年代、南アフリカでは、欧米でヒットしたR&Bやヒップホップ、ハウスの要素を、現地のズールー語によるチャント(かけ声)やパーカッションなどと掛け合わせた「Kwaito(クワイト)」という、遅めのハウスのような音楽がはやっていたんです。これが進化する形で、突然変異的に生まれたのがGqomなのではないかと思っています。

※1 四つ打ち : ハウスやテクノによく見られる、 四分音符でキックドラムを鳴らすリズムの形式。

※2 BPM : Beats Per Minute。1分間に刻まれるテンポの示す単位。

ーアメリカ合衆国のシカゴで生まれた「ハウス・ミュージック」がキーなんですね。舶来文化がミックスされる港湾都市らしさも感じます。

KΣITO : 南アフリカは、世界でも珍しいくらい、ハウスが定着した国だと思います。踊る文化が当たり前にあるので、Gqomはハウスと同じように、1曲が5〜6分などと長尺で踊りやすい曲が多いのも特徴かもしれません。同じアフリカ大陸でも、たとえば、現行のナイジェリアのAfrobeats(アフロビーツ)は、2〜3分で終わるようなインパクト重視の曲も少なくないので。

ーそれではプレイリスト1曲目、DJ LAG ”WaWaWa”のビデオがあったので、見てみましょう。

DJ MORO : これは最新のGqomの曲です。

ーみなさん華麗なステップで、ガンガン踊っています。

KΣITO : 南アフリカの人たちは、音楽が身近なんですよね。イベントやパーティーは、クラブだけでなく、パブ、レストランでも大音量で開催されています。自分がダーバンで行った郊外の会場は屋外で、民家がすぐそこに見える場所なのに、ものすごい音量を出していました。あと、このビデオにも出てくるんですけど、「タクシー」と呼ばれるバンがあって……。

ーハイエースみたいなワンボックスの赤い車が出てきました。

KΣITO : 乗り合いのバスのようなもので、ここでもBGMとして音楽をガンガンかけているんです。

ーこの”WaWaWa”もそうですが、Gqomは「乗り合い」と言えばいいのでしょうか。プロデューサー、シンガーも含めて、流動的なコラボレーションを頻繁に行っているように感じています。

KΣITO : 南アフリカでは、プロデューサーがひとりで制作するより、仲間同士で家やスタジオに集まって曲をつくるスタイルのほうが一般的だと思います。

DJ MORO : 選んだ曲で言えば、3曲目のBusiswa “uWrongo”では、ベテランのプロデューサーであるRudeboyzがフィーチャーされています。6曲目のDJ TIRA “Ngawe”では、ボーカリストにDladla MshunqisiとJoocyプロデューサーのBlaQRhythmを迎えていますね。

ーそのDJ TIRAをはじめ、Gqomのアーティストは、自身が成功した後にレーベルやプロダクションを立ち上げるなどして、これからの人たちをバックアップする姿勢も根づいているのでは?

KΣITO : たしかにGqomは、新しい人をフックアップする(引き上げる)ノリがあって、売れた人が「独り占めしよう」という印象もあまりないですね。売れてる人、売れてない人……そこに垣根がない。有名なアーティストの作品に、無名の新人がフィーチャーされることも少なくないです。音楽をつくる人が多く、新しいプロデューサーが次々に登場して、売れていくスピードも速いなと感じています。Instagramを見ていると、わかりやすく服装が小奇麗になる人もいたりして……。

ーしっかり売れたんですね。港湾都市という点では、横浜出身のDJ MOROさんは、そうした「乗り合い」のようなGqomの土壌との共通項を感じてはいませんか?

DJ MORO : 横浜でも、トラックメイカーやDJによる共同制作のカルチャーはなじんでいるように思います。尊敬するレーベル「PPP(PAN PACIFIC PLAYA)」の方々も、コンピレーション・アルバムやスプリット・シングル ( ※3 ) を含む、数多くのリリースをしていますし、かつてLUVRAW & BTBのライブでは、Mr.Melodyさん(DJ・プロデューサー)が参加して、ヒューヒューBOYさん(DJ)がMCを務める……という、ある種のファミリー的な空気もありましたよね。

※3 スプリット・シングル : 1枚のレコードやCDに、2〜3組のアーティストによるそれぞれの楽曲を収録したシングルのこと。

乗り合いのバンで生まれた「Taxi Kick」

ー他方、Gqomのメジャーな仕事として、DJ LAGやBusiswaが、Beyoncéと“MY POWER”という曲を共同制作したことも知られています。

KΣITO : プレイリストに入れたほうがよかったですか?

DJ MORO : おそらく、世界でいちばん有名なGqomですね。ただ、あまりに多くのDJがフロアでかけてきたのと、自分たちとしては定番すぎて……Gqomが持つアンダーグラウンド性を加味して、今回のプレイリストには入れずにおきました。

KΣITO : 2017〜19年ごろ、Gqomが国外からも注目されて盛り上がっていた時期に、Beyoncéも、Major Lazerも、Gqomを取り入れた楽曲をリリースしています。架空のアフリカを舞台とした映画『ブラックパンサー』の公開もそのころで、サウンドトラックを含めて、アフリカ音楽への関心が高まったタイミングでもありました。でも、そのあたりから、流行の軸がGqomからAmapiano(アマピアノ)へ移っていくんです。GqomよりBPMを落とし、異種交配を進めたAmapianoは、Gqomよりさらに世界中で聴かれ、メジャーになっていきました。

DJ MORO : Amapianoが隆盛を極めて、Gqomの新作が以前ほど出ていない時期もありましたね。そのときGqomのDJは、かける新譜が見つかりづらく、苦しかったように思います。

KΣITO : それでもGqomは定着して聴かれつづけていて、最近また盛り返しています。おもしろい新譜も、たくさんリリースされている印象ですね。

ー「Uthayela(ウタエイラ)」という、ズールー語で「波形の鉄板」を意味する言葉で形容される、ハードな系統のGqomもあるそうですね。

KΣITO : Gqomはサブジャンルがたくさんあって、アフリカの丸いパンの名前と同じ呼び方の「Dombolo(ドンボロ)」。先ほど話したワンボックスカー「タクシー」でパーティーをするなかでつくられた、激しくてダークな「Taxi Kick(タクシーキック)」というものもあります。

DJ MORO : ひずんでいて、音も悪くてね。

KΣITO : 「Taxi Kick」はサブスクにもあまりなくて、購入できるプラットフォームもそこまで整っていない状況です。WhatsAppというアプリのグループ・メッセージだけで出回っている作品があったりもします。

ーGqomはレコードでもリリースされていますか?

DJ MORO : 「Gqom Oh!」をはじめ、イギリスやヨーロッパのレーベルからのリリースはありますが、アフリカ現地のレーベルで大規模なプレスをしたという話は、ウガンダの「Nyege Nyege Tapes」以外、知る限りではないですね。ダーバンのクラブには、ターンテーブル(レコードのプレイヤー)もなかったでしょ?

KΣITO : いろんなクラブがあると思いますが、自分が見た感じでは基本的にターンテーブルはなくて、CDJ(DJ用のCDプレイヤー)だけですね。Gqomの流通はデジタル配信が中心で、Apple MusicやSpotifyで聴けるものも他ジャンルに比べて多いのではないでしょうか。

ーそうした楽曲から、今回のプレイリストをつくっていただきました。どのような方向性でセレクトしたのでしょうか?

DJ MORO : 全体を通して聴いてもらえれば、Gqomとは何かがわかるような選曲を心がけました。冒頭の6曲は最新のGqomで、聴きやすい歌ものから始めています。後半はGqomの派生系というか、徐々に逸脱していってますね。Razzler Man ”Sound Bwoy”は、Amapianoの要素も入っています。State OFFFやABEはオランダのアーティストで、最後の曲のaudiot909は日本でAmapianoをつくっているプロデューサーです。

KΣITO : 14曲目の“Insimbi”は、Afro Tech(アフロ・テック=テクノ、ハウス、アフリカ由来のリズムやSF的な未来志向などが混成されたもの)の要素もあるGqomです。ハウスを軸にいろんなジャンルに派生して、またくっついては化学反応が起きて、違う何かができる。南アフリカの音楽は、いまもリアルタイムで進化しています。

ー最後にリスナーのみなさんへ。

KΣITO : Gqomとにかく踊れる音楽です。YouTubeやInstagram、TikTokでも、踊っている人の動画がたくさん見られるので、あわせて楽しんでもらえたらと思います。自分たちは南アフリカの現地をよく知るmitokonさん(DJ・ライター。TYO GQOMのメンバー)にいろいろ教えてもらった身でもあり、Gqomについて代表者のように語るのは差し出がましい気もするのですが、せっかくなのでお話させていただきました。

ー本日はありがとうございました!


TRACKLIST

DJ LAG & Djknator – WaWaWa (feat. Thobeka)
QUE DJ – We Don’t Play the Same Glom (feat. General C’Mamane)
Busiswa – uWrongo (feat. Rudeboyz)
Unticipated Soundz – Skibha SaBravo
Dj Pepe x KwaH[NSG], Dladla Mshunqisi, Beast Rsa & Konke – Party Island (Remix)
DJ Tira – Ngawe (feat. Joocy, Dladla Mshunqisi & BlaQRhythm)
DJ Lag & Okzharp – Steam One
Raido – Eco-Tek
xiangyu – Poo Pad Pong Curry (Emo Kid Remix)
AkiidMusiq & Djknator – Durban Drift
WRACK – South Bird
Razzler Man – Sound Bwoy
ABE – DRMGN
Deep Narratives, ZVRI, Culoe De Song – Insimbi
State OFFF – Awakening
audiot909 – Ibuki (Gqom) [feat. KΣITO]


Profile

GQOMZILLA | ゴムジラ

TYO GQOMやテクノウルフとして活動を共にするDJ MOROとKΣITOによる、Gqomを主軸にプレイするDJユニット。
DJ MOROのエモーショナルなDJスタイルとKΣITOのフィンガードラムを組み合わせ、よりパワフルなGqomのサウンドを表現するために結成した。
2020年、Black Smoker RecordsよりMix CD『Okusha』をリリースした。

IG: @morostarr @keitosuzuki

Interview and text by Hanazawa Ou
Illustration by Oki Masahide