海をつなぐ
マンガ100選とは
「海をつなぐマンガ100選」は、マンガを通して海へと旅する企画です。冒険の海、恋が芽生える海、食を育む海、そして記憶や祈りを受けとめる海。マンガの中には、実にさまざまな海が描かれています。ページをめくれば、遠い海も、まだ知らない海も、ぐっと身近になります。海がどのように登場するのかという視点で読み返すと新たな発見が生まれ、海に託された思いに目を向ければ、物語のまた違ったおもしろさが見えてきます。全国のマンガミュージアムや研究者とともに選んだ作品から、マンガを通してつながる海の広がりと深まりを、ぜひ味わってください。
はじめての海マンガ会議
「海をつなぐマンガ」のはじめての会議は、各館がそれぞれ10作品を持ち寄り、紹介し合うところからはじまりました。あえてテーマを設けなかったことで、集まった作品はとても多彩なものでした。「それも考えていた」「最後まで迷った」という声もあがり、発表のたびに新しい海が広がっていきます。「海をつなぐマンガ」を決めていくために推薦作品をジャンルでわけようと試みましたが、恋愛の中に科学があったり、冒険の中に怪奇があったりと、ひとつに分けることの難しさに直面しました。議論を重ねた末、「どんな海が描かれているか」という視点で読み解いていくことを、この企画の軸にしようとなりました。本企画で紹介する作品は、3館のマンガミュージアムと海の研究者、教育者とのディスカッションを経て選定されたものです。
[協力図書館(北から順)]
- 京都国際マンガミュージアム
- 北九州市漫画ミュージアム
- 合志マンガミュージアム
Vol.1海の多様さ①
最初に紹介する作品は、マンガで描かれる海の幅の広さを感じてもらうためのものである。少年向けの冒険ものから、恋愛、戦記、神話やグルメ、生きものを扱う作品から学習マンガまで、どのジャンルにも海がある。舞台としての海もあれば、海そのものを主題にした作品もある。感情を海にたとえる作品もあれば、国や安全保障を考えさせる作品もある。同じ「海」でも、表れ方はまったく違うことを感じてもらえるだろう。
海のマンガに関して、時間をさかのぼれば、戦前の灯台ものに行き着く。灯台守の暮らしや、子供たちのひと夏を描いた作品には、静かな叙情がある。戦時下の表現規制のなかで学習的な色合いを帯びながらも、海のそばで生きる人びとの姿が丁寧に描かれていた。こうした作品が今も読めることは、日本のマンガが長い時間をかけて海を描いてきた証しでもあるだろう。
海のことを勉強しようと言われると、身構えてしまう。でも、「マンガを読んでみよう」と言われると、すんなりと入ることができたりする。ジャンルも絵柄もテーマも多様で、入り口がたくさんある。そこにマンガの可能性がある。
マンガだからこそできることにも目を向けたい。荒波の大きさを説明するのではなく、ページいっぱいに描ききること。読者の目と身体を、その波のなかに置いてしまうこと。湿った空気や足もとの揺れまで感じさせること。水を描くのは難しいと言われるが、その難しさを引き受けた作家たちの手によって、海はそれぞれのかたちで立ち上がる。同じ海でも、作者のフィルターを通してマンガとして表現される海は、それぞれに別のものになる。マンガという表現のおもしろさと海は深く響き合っているのかもしれない。
海の多様さは、そのままマンガの多様さであり、そして私たちの海との関わり方の多様さと言えるだろう。