pAradice / Sound of the wavesShiosaiRADIO vol.20

ミュージシャンやDJが、海をテーマとした選曲をプレイリストとしてお届けする〈潮騒RADIO〉。

vol.20は、岡山県瀬戸内市を拠点として活動するDJのpAradiceさんが登場です。もともとは神奈川県出身で、2010年からは老舗のパーティ「LIFE FORCE」にクルーの一員として参加されるなど、都心のクラブ文化のなかで存在感を放ってきたpAradiceさん。現在は瀬戸内海に面した牛窓町へ移住し、独自の選曲眼に磨きをかけ、全国各地の屋内/野外イベントに招へいされています。「牛窓の生活」と題して、楽曲をセレクトしていただきました。

「多島美」を眺める牛窓の生活

ー牛窓の暮らし、いかがですか?

ゆるくていいですよ。いまは漁師の船着場がすぐ近くにあるエリアに住んでいます。ゆったりした時間を過ごすのに、すごくいい場所です。

ー牛窓の海は、どのような海ですか?

瀬戸内海なので、基本的には穏やかで、波もほぼない“ベタ凪”。大小さまざまな島が連なって見えるので、その海景は「多島美(たとうび)」「日本のエーゲ海」などと呼ばれています。美しい景色を毎日、眺められるのもぜいたくで、あまり人も多くないから、独り占めできるような感覚もあります。

ーきれいで穏やかな海なんですね。

でも、潮の満ち引きは大きくて、2メートル近く上下するんじゃないかな。潮が引くと、ビーチがひとつできるくらいの感じで、潮が満ちると、海が迫ってくるようでもあって。音の面でいえば、周りが静かな環境なので、トンビの鳴き声もよく耳にします。

ー今回は、そうした牛窓の生活をテーマにして、プレイリストをつくっていただきました。

「海をテーマにしたプレイリスト」と考えたときに、自分の近くにある海を題材にしようと思って。私が牛窓で手伝っていた、海の目の前にある飲食店のプレイリストに入れていた楽曲からも、何曲か選んでいます。

牛窓は農業がけっこう盛んで、人の営みというか、生活感がしっかりあるように感じているんです。キャベツ、白菜、冬瓜、そして、瀬戸内海が一望できる「牛窓オリーブ園」も有名ですよね。

一方で、牛窓には過去に何度もUFOの目撃談があって、UFOにちなんだ短編映画も撮られています。そうしたことも踏まえて、地球外生命体と交信するような謎めいたムードも交えながら、選曲してみました。プレイリスト全体としては、朝からはじまって夜が来て、また朝が来る、という時系列を意識しています。

ー1曲目はSam Scranton “Natural Mellow”。アメリカ合衆国のコンポーザーによる、詩的で静かな楽曲で幕を開け、続く2曲目、フランスのデュオ、Opéra Mortの“Damien Schultz”も、ミニマルな立ち上がりです。

この2曲は、海の底から何かが生まれる、生命力が宿るようなイメージで選びました。ちいさな水泡のような感じもありますよね。その次の3曲目、“Voyage”を歌うLior Shoovは、パリとテルアビブを拠点として、世界各国を旅してきた人なんだそうです。船を漕ぎだして、1日がはじまるような風景が浮かびます。

ー4曲目は、南アフリカ共和国のThe Moversによる“Ku-Ku-Chi”。1970年代にリリースされた楽曲で、やわらかくも力強い趣きです。

この曲は、その日の「人の生活」がはじまるイメージで選びました。早起きして、畑を耕したり、料理をつくったり……というような暮らしが想像できる曲かなと。

ー5曲目は、ロシア出身の作曲家、Misha Sultanの“So Do I”。

異国情緒が漂う、ブレイクビーツと融合したジャズなどと紹介されている楽曲です。「記憶と現在」「自然と都市」「光と森の闇」のバランスを模索したなかで生まれた曲だということで、どことなく「光」のニュアンスを強く感じて選びました。

かつて自分は都会に住んでいたんですが、いまは牛窓で日々を過ごしています。自然と接するなかで、この曲のように、電子音とアコースティックで自然な音が混ざっているものが好きになって、よく聴くようになりました。

ー6曲目のRobert Lester Folsom “Strolling Along”は、どことなくトロピカルな趣きです。

牛窓は南国ではないけど、このプレイリストをつくっていたのが夏で、暑かったし、海も近くにあるので、そうした選曲になったのかも。その次のPool Boy “Movie Night Cancelled (Domenique Dumont Dub Version)”も、夏のチャラさみたいな雰囲気で選びました。

ー8曲目は、Arwi of Lovers “Nightride”。ブルージーなギターとオルガンが印象に残ります。

気だるい夕方をイメージして選んだように思います。まだ日は落ち切ってないけど、お酒を飲みはじめてもよさそうな時間です。

ー9曲目は、オーストラリア拠点のプロジェクト、Static Cleaner Lost Rewardによる“Submerging Emergency”。

モヤがかっているような音像も印象的なので、夜になる前の時間のイメージで選びました。この曲が収録されているアルバムは、ジャケットに海と太陽が描かれていて、ほかにも”Stones on the Beach”“Sea Slug Bender”など、海をテーマにした曲が並んでいます。

その次のNick León ”Scavenger Hunt”は、夜への導入部として選んだ、気持ちよく、どこかへ誘われるような楽曲です。

ーそして、イギリスの電子音楽のプロデューサー、K-LONEの“Water Palace”。

曲名のとおり、水っぽい音だなと思って。夜の海に浮かんでいたり、泳いだりしているような気持ちよさがありつつ、すこし不思議な感覚もあります。

ーその次のKirk Barley “Vita”から、爪弾くような優しいタッチの曲が続きます。

虫の声もあまり聞こえなくなって、人もいなくなって……という、すごく静かな夜中の牛窓の海をイメージしています。動物がガサガサ動く音、季節ごとに変わる虫の鳴く声もときどき聞こえてきたりして、自然の何かが息づいているようなムードですね。

ーMichael O’Mahony “Be Good”は「ボーカロイド(ヤマハが開発した人工音声合成技術)」を使っているんですね。何を言ってるのか、わかりませんが……。

ボーカロイドで発している言葉にあまり意味はないみたいで、夜が深まって朝が来る前、宇宙人がやってきてもおかしくないような不思議な時間をイメージして選びました。

このあたりは全体的に、自然のなかのちいさな変化を愛でるような感じかなと。それが、「爪弾き」のような選曲につながったのかもしれません。

ー最後の曲は、青葉市子 “マホロボシヤ”。

青葉さんのインタビューを読んだところ、この“マホロボシヤ”には「まほろばのある星」という意味が込められているそうです。「まほろば」は「すばらしい場所」「住みやすい場所」という意味の古語で、青葉さんはそれを「すごく小さなコミュニティーだけど大事なものがギュッと集まっている守られた世界」と話していて、この「牛窓の生活」と題したプレイリストを締めくくるのにふさわしいと思ったんです。

ちなみに、この曲を知ったのは、牛窓にある景色のいい建物で、レコードの鑑賞会を企画したことがきっかけです。そのときに聴いた青葉さんのレコードは驚くほど音がよくて、それでハマって……という曲でもあります。

ー最後にリスナーの方へ。このプレイリストはどのようなときに聴くと、より楽しめそうでしょうか?

ふと「どこか旅でも行きたいなぁ……」と思ったときにどうぞ。

—Everyone, please enjoy the playlist!


TRACKLIST

Sam Scranton – Natural Mellow
Opéra Mort – Damien Schultz
Lior Shoov – Voyages
The Movers – Ku-Ku-Chi
Misha Sultan – So Do I
Robert Lester Folsom – Strolling Along
Pool Boy – Movie Night Cancelled (Domenique Dumont Dub Version)
Arwi of Lovers – Nightride
Static Cleaner Lost Reward – Submerging Emergency
Nick León – Scavenger Hunt
K-LONE – Water Palace
Kirk Barley – Vita
Michael O’Mahony – Be Good
Bobbie Lovesong – Day 01
Babyboy Dorian & Supernatural Keyz – This Must Be Love
Water Melon Group – TIARE
yes/and – Centered Shell
青葉市子 – マホロボシヤ


Profile

pAradice | パラダイス

parallel×dice≒pAradice。
個性と共に音楽の旅をする、東京の小箱出身。酒場で煮込まれた面白音楽ナビゲート。辺境、マイノリティディガー。
アナログとデジタル、テクノとジャズ、二次元と三次元をひとつのフィールドにミックスするスタイルで、各地のローカルネットワークと交流。フロアの温度と意識を1度上げる活動家。
2010年から”LIFE FORCE”に参加。現在は岡山/牛窓を拠点に新たな活動の場を広げている。

IG: @akkikori

Interview and text by Hanazawa Ou
Illustration by Oki Masahide